決心した。A社に契約解除を申し入れることにしたのだ。 手付けの10万円をあきらめれば大丈夫だろう。 当時の私は,契約についてはとんと無知で,契約書は読まなかったし,手付けの意味も知らなかった。恐ろしい話である。 担当者へ電話し契約解除を申し入れると、とにかく店にくるよう言われた。 担当者はかなり渋った。そりゃ,渋るだろう。 担当者曰く、 「一時的な気の迷いです」 「もう製造工場に,かつらを発注しちゃいましたから...」 「今、かつらを決心しないと、永久にこのままですよ」 などなど、店の一室で、1時間以上、説得された。 しかし,こちらも粘った。粘った甲斐があって、最終的には契約解除を飲んでくれたばかりか,手付けまで返してくれたのである。 クーリングオフの適用になったのだ。 後で知ったのだが,クーリングオフは,本来は訪問販売にしか適用されない。 訪問販売では、消費者は何の準備もなく営業トークを受けるので、弱い立場にある。だから保護しましょ、という考え方だ。 一方、消費者が自分の意志で店に出向いたなら,十分な準備をしているはずだから,特別保護する必要はない,という理屈だ。 今回は、もちろん、こちらから連絡をとって出向いているから、クーリングオフは適用対象外のはずだ。 なのに適用になった。 おそらく,A社が自主的に適用しているのだと思うが,これはありがたかった。 当時の担当者にはかわいそうなことをしてしまったが,この場を借りてお礼申し上げたい。 もっとも「二度と店舗には出入りしません」という誓約書を書かされた。 今でもクーリングオフをした客には誓約書を書かせているのだろうか。 ところで,こうした他人に相談しにくい契約をするなら,事前に最低限,消費者保護法くらいは勉強しておいた方がいい。 簡単な解説書がたくさん出ている。ぐぐるだけでも解説サイトがたくさんヒットする。 後にして思うと,当時の自分はまったく無鉄砲だった。 |